与えるもの/受けとるもの
彼女の放ったコトバが、何かの破片のように俺の胸に刺さる。
少なくとも、刺さったと俺は感じている。
刺さったのはコトバ?
それとも他の何か?
本当に刺さってるのか?
単純に言うと、俺は嫌な思いをした。
多分、おかしな表情になっていたはず。
なんでそんな酷い言い方するんだろう。
その時俺はそう思っていた。
でも、言い返したりはしなかった。
言い返したりしたって、ロクな結果にならないだろう。
せいぜい自分を正当化するためにお互いを非難し合うのがおちだ。
そんなの、もっと嫌な気分になっちまう。
数分経つと、少し落ち着いてきた。
時間って意味があるな。
落ち着いて考えると、酷い言い方をしたと俺が思っているその人に、俺はたくさん嫌なことをしてきたことに気付く。
それが還ってきただけなのかな、って思ってみた。
与えたものしか手に入らない、って誰かが言ってた。
そうなのかもしれない。
だとしたら俺は阿呆。
自分で自分を苦しめてる。
そもそも、傷付いたり、嫌な思いをすることも、俺が自分自身にそれらを許した結果に過ぎない。
これは俺の世界。
すべては俺が許した幻だ。
簡単に小さな悪意や失望を生み出しているんだ。
ただ、俺はその幻を愛しちまってる。
だからもう少し優しくいようか。
幻の彼女にも。
世界をもう少しマトモな場所にするためにも。
無言のままの俺は、そんなことを考えていた。
時間と空間があるという、この世界で。
もしも何もかもがうまくいかなくなったとしたら、独りに戻るだけだと自分に言い聞かせながら。
俺にはまだ、見つめるだけの関係性があるんだな。
もう少し、あがいてみようか。
何のためかはよく解らなくても。
生まれて、生きているから。
次は何を受けとるだろう?
何を与えられるだろう?